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稀に見るお粗末な引継ぎに遭遇した税理士が語る、顧問選びで本当に大切な「たった一つ」のこと

「うちの担当は、責任をもって見てくれているんだろうか」「質問しても『確認します』ばかり」「決算は出てくるけど、経営の話は一度もされたことがない」――もしそんな違和感があるなら、その感覚はおそらく正しい。そしてそれは、あなたの運が悪いのではなく、税理士事務所の「構造」の問題であることが多いのです。

私は日々、他の事務所から顧問を引き継ぐ立場にいます。その中で、言葉を失うほどお粗末な引継ぎに何度も遭遇してきました。この記事では、その実例を入り口に、顧問選びで本当に大切な「たった一つ」のことをお話しします。

1. きっかけは、あまりにもお粗末な引継ぎだった

ある会社の顧問を引き継いだときのことです。前任は、いわゆる「大手」の税理士法人でした。名前を出せば多くの人が知っている規模です。

ところが、引き継いだ帳簿を開いて驚きました。仮払金がマイナスになっている。仮払金とは本来「一時的に立て替えて、あとで精算する」お金です。それがマイナス、つまり理屈の上ではあり得ない残高のまま、何ヶ月も放置されていたのです。

記帳も中途半端でした。領収書は入っていたり入っていなかったり。勘定科目の使い方も一貫していない。決算書は「作られてはいる」けれど、社長がそれを見て経営判断できる状態にはまるでなっていなかった。社長に尋ねると、こう言いました。「担当の方に聞いても、いつも『確認します』で終わってしまって……」

2. 言い訳、責任転嫁、そして出てこない上司

引継ぎにあたって前任へ確認を入れると、返ってきたのは説明ではなく言い訳と責任転嫁でした。「前の担当が」「資料をいただけなかったので」。そして肝心の判断を求めても、担当者本人には答えられず、上司は最後まで出てこない

なぜ、こういうことが起きるのか。私はこれを、担当者個人の資質の問題だとは思っていません。構造の問題です。大きな組織ほど、日々クライアントに接するのは経験の浅い担当者になりがちです。彼らは大量の案件を「さばく」ことを求められ、一件一件を深く考える時間も、最終的な責任を負う立場も与えられていない。だから込み入った論点になると「確認します」で止まり、責任を負える人(税理士本人)は前面に出ないのです。

これは意地悪ではなく、そういう仕組みで回っているというだけの話。問われているのは資格の有無ではなく、「その場で判断し、最終責任を引き受けられる人が現場にいるか」です。

3. クラウド化で半日。旧態依然のやり方への疑問

引き継いだあと、私はまずクラウド会計(freeeやマネーフォワード)へ移行しました。銀行やカードのデータが自動で取り込まれ、数字がリアルタイムで「見える」状態になります。移行にかかった時間は、実質半日です。

「顧問を変えるとデータの引継ぎが大変では」とよく心配されますが、クラウド会計であればその負担はごくわずか。紙とExcelの事務所からの移行でも、恐れるほどのことはありません。むしろ問題は、いまだに数字が"見えない"やり方のまま、社長に何の説明も還元もしていない事務所が少なくないことのほうです。

4. 顧問選びで本当に大切なこと

まずはAIに聞いてみると……

試しにAIに「顧問税理士の選び方」を尋ねると、こんな答えが返ってきます。「実績」「料金の明確さ」「レスポンスの速さ」「業種への理解」「相性」――どれも間違ってはいません。

しかし、私の答えはもっとシンプルだ

私の答えは、たった一つです。

「日々あなたに向き合うのが、最終責任を負う税理士本人か」

これに尽きます。実績も料金も、この一点が満たされていなければ意味をなさない。なぜなら、あなたの決算も、節税も、資金繰りの相談も、最終的に手を動かし、責任を引き受ける"人"によって質が決まるからです。

なぜ「誰が現場に出てくるか」が重要なのか

税理士業は、突き詰めれば人的サービスです。同じ「税理士業」という看板でも、実際に対応するのが最終責任を負う税理士本人か、責任を負う立場にない作業担当者かで、受けられるサービスはまったくの別物になります。前者は数字とヒアリングをもとに先回りで提案し、トラブル時には自ら矢面に立てる。後者は言われたことを処理するのが役割で、判断も責任も本人の手には余る。これは担当者個人の能力の問題ではなく、責任を負う権限が与えられていないという「立場」の問題なのです。

「担当者変更」が効かない理由と、「税理士比率」という構造

「担当が合わなければ、変えてもらえばいい」と思うかもしれません。しかし、責任を負う税理士が現場に出てこない組織では、"担当者変更"は本質的な解決になりません。代わりに出てくるのも、同じく最終責任を負う立場にない担当者である可能性が高いからです。問題は担当者個人ではなく、組織の構成にあります。

その構成は、実は一つの数字で見えてしまいます。それが「職員に占める税理士の割合=税理士比率」です。日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」では、各税理士法人に登録している税理士を誰でも実数で調べられます。これを各法人が公表する職員数と突き合わせると、税理士比率が算出できます。

税理士比率(職員に占める税理士の割合)― 法人名はイニシャル表記

出典:日本税理士会連合会「税理士情報検索サイト」(2026年7月時点の登録税理士数)÷各社公表の職員数より算出。職員数の定義・時点は各社で異なり、単体かグループ全体かで数値は変動します。※比率の高低は個々の法人のサービスの優劣を示すものではなく、業界構造の可視化を目的とした集計です。

税理士比率3.9%とは、税理士1人あたり職員が約25人という意味です。この構造で、責任を負う税理士本人が日々あなたの現場に出てくると期待するのは、なかなか難しい。相続に特化したブティック型では40%を超える法人もあり、まさに「業態による構造の違い」が数字に表れます。

「クライアントの立場で考える」税理士の2つの条件

まとめます。あなたが探すべき税理士の条件は、たった2つです。

  1. 最終責任を負う税理士本人であること(自ら判断し、責任を引き受けられる。「確認します」で止まらない)
  2. クライアントの立場で考える姿勢があること(あなたのレシートを処理するだけでなく、あなたの経営の設計を手助けしてくれる)

この2つが揃ってはじめて、税理士は「あなたの伴走者」になります。

おわりに:顧問は、変えられる

顧問税理士は、いつでも変えられます。そして動くなら決算前が最善です。打てる手が最も多く残っているからです。「今の顧問のままで安心か」――もし少しでも迷いがあるなら、まずは現状を"見える化"してみてください。あなたの会社は、「処理データ」ではなく「伴走すべき一社」です。それを当たり前に扱ってくれる税理士は、必ずいます。

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