顧問料はどう決まるのか ―「高い気がする」の正体と、値上げを求められたときの考え方
「毎月の顧問料、少し高い気がする」「先日、来期から値上げしたいと言われた」——顧問税理士の報酬料金について、こうしたご相談をいただくことがあります。ところが、お話をうかがっていくと、多くの方はいまの顧問料に何が含まれているのかをよくご存じないまま、金額の高い・安いだけを気にしておられます。
顧問料は、顧問税理士の感覚だけで決まっているわけでも、業界一律の料金表があるわけでもありません。いくつかの要素の組み合わせで決まっています。その仕組みが分かると、「顧問料が高いかどうか」は自分で判断できるようになりますし、値上げを求められたときにも落ち着いて話ができます。
1. 「高い気がする」の正体は、たいてい金額の問題ではない
顧問料への違和感をうかがうと、その中身は大きく2種類に分かれます。
ひとつは、本当に金額そのものが負担になっている場合です。売上が落ちた、資金繰りが厳しくなった、というときに、固定費としての顧問料が重く感じられる。これはコストの問題です。
もうひとつは、金額に見合うものを受け取っている実感がない場合です。こちらのほうが一般的なケースでしょう。金額自体は変わっていないのに、「担当者が交代してから相談しづらくなった」「この一年、こちらから連絡した時以外にやり取りがなかった」といった印象が続くと、同じ金額を支払っていたとしても、次第に割高に感じられるようになります。
この2つは、対処の方法がまったく違います。前者なら業務範囲を減らして金額を下げる交渉が現実的ですが、後者で金額だけを下げてしまうと、受け取れるものはさらに減り、不満はかえって深まります。まず、自分の違和感がどちらの要因から生まれているのかを切り分けてください。期中に何を受け取れているはずかについては、顧問税理士は、ふだん何をしてくれる人なのかもあわせてご覧ください。
2. 顧問料を決めている、3つの変数
税理士事務所によって料金の組み立て方はさまざまですが、多くの場合、次の3つの要素で金額が決まっています。契約書や見積書を見るときは、この3つの視点で読むと理解しやすくなります。
顧問料を決めている3つの変数
- ① 業務の範囲/申告書の作成だけなのか、記帳代行まで含むのか。給与計算、年末調整、消費税の申告、償却資産の申告は含まれるか。同じ「顧問料」という名前でも、業務範囲が違えば金額は大きく異なります。金額を他社と比べるときに、いちばん見落とされるのがこの変数です。
- ② 会社の規模と取引の量・質/売上の規模、取引や仕訳の件数、従業員の人数、事業所や店舗の数、外貨取引や海外取引の有無。事業がより大きく、複雑になればなるほど、会計・税務により多くの手間とより専門的なノウハウを要します。事業が伸びればこの変数は自然に上がります。
- ③ 関与の頻度と深さ/面談が毎月なのか、四半期ごとなのか、決算のときだけなのか。試算表を毎月出すのか。誰が担当につくのか。相談にどこまで応じてもらえるのか。この変数は税理士事務所が「時間をどれだけ使うか」によって決まります。
この3つのうち、ひとつでも他社と条件が違えば、金額を比べることには意味がありません。知人の会社より高い、という比較がほとんど当てにならないのは、この3つが会社ごとに違うからです。
3. 「顧問料があとから上がる」のは、なぜ起きるのか
顧問契約を開始したときの金額が、いつのまにか上がっている。あるいは、来期から上げたいと求められた。この増額には、いくつかの決まったパターンがあります。理由によって、納得できるかどうかも、取るべき対応も変わります。
(1)会社が大きくなったことによる増額
取引の件数が増えた、従業員を雇った、店舗を増やした、消費税の申告が必要になった。この場合、税理士側の業務量と税務代理リスクは実際に増えています。これは根拠のある増額であり、増額を断るとすれば、「この範囲の業務は自社でやります」という交渉が有効でしょう。
(2)契約時の条件が終わったことによる増額
創業まもない時期の割引や、初年度に限った金額で契約していた場合、その期間が終われば本来の金額に戻ります。契約書に「翌期以降は所定の報酬規定により改定する」といった条項があるのに、その規定そのものを見せてもらっていない、というご相談も実際にあります。これは値上げというより、最初の説明が足りていなかったという話です。
(3)事務所側の事情による増額
人件費の上昇や制度改正への対応など、事務所側のコストが理由の場合もあります。これ自体は不当なことではありませんが、説明があるかどうかで受け取り方はまったく違います。増額理由の十分な説明がなければ、多くのクライアントは不信感を持たれるでしょう。
一方で、増額の話が出たときに「なぜですか」と聞けないまま受け入れてしまう方も少なくありません。聞くこと自体は失礼ではなく、むしろ当然の確認です。
4. 値上げを告げられたときに、確認したい3つのこと
その場で結論を出す必要はありません。次の3つの質問への答えを貰ってからでも遅くないでしょう。
- 「何が変わったのでしょうか」——上の3つのうち、どのパターンなのかを確認します。事務所の作業量が増えたのか、値引期間など特別な条件が終了したのか、事務所運営上の事情が変わったのか。それがはっきりすれば、自分が納得できるかどうかは判断しやすいでしょう。
- 「新しい顧問料には、どこまでの業務が含まれますか」——増額に伴って業務範囲が変わることもあります。金額だけを聞いて中身を聞かないと、新旧の比較のしようがありません。
- 「こちらで引き取れる業務はありますか。その場合、金額はどう変わりますか」——これが、最も建設的な聞き方です。値切り交渉ではなく、業務の分担を組み替える相談になるため、相手も答えやすくなります。
この3つを聞いたうえで、それでも説明が返ってこない、あるいは説明された内容に納得できない、というときに初めて、顧問の変更を検討する段階に入ります。
5. 金額を下げる以外にも、選択肢はある
「高い」と感じたときの対応は、値下げ交渉か乗り換えかの二択ではありません。実際には、次のような選択肢があります。
顧問料の相談は、金額の交渉ではなく「業務の分担をどう引き直すか」の相談として持ちかけるほうが、まとまりやすい
ひとつめは、業務を自社に戻すことです。記帳を自社で行えば、一般にその分の報酬は下がります。ただし、自社の手間は確実に増えるでしょう。会計ソフトへの入力を自社で引き受けたものの業務が滞り、決算のときに数か月分をまとめて処理し直すことになった、というご相談は珍しくありません。下がった金額に見合うだけの手間を、本当に自社で負えるのかを先に予測してください。
ふたつめは、逆に業務を増やすことです。「高い」という感覚の正体が「受け取れているものが少ない」という事実であれば、月次の試算表作成や定期的な面談を追加してもらう方向で相談したほうが、満足度は上がります。同じ金額でも、使い切れていなければ割高に感じられます。
みっつめは、関与の頻度を落とすことです。毎月の面談を四半期ごとにするなど、相手事務所の稼働を少なくすれば金額も上がらずに済む場合があります。ただし、税理士事務所との関わりが減ることのリスクは、あらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。
いずれにしても、まずは今の顧問に相談してみることをおすすめします。金額の話は切り出しにくいものですが、税理士の側も、クライアントに不満を抱えられているより、はっきり言っていただいたほうがありがたいと考えていることがほとんどです。
まとめ ― 比べるべきは、金額ではなく中身
顧問料について考える順序を、整理しておきます。
- 違和感の正体を切り分ける。金額そのものが重いのか、受け取れているものが少ないのか
- 契約書で業務範囲を確認する。何が含まれ、何が含まれていないのか
- 増額を告げられたら、理由を聞く。作業量の変化なのか、値引期間などの条件の終了なのか、事務所側の運営上の事情なのか
- 金額ではなく、業務の分担として相談する。減らす、増やす、頻度を変える、という選択肢がある
他社の金額と比べることに、あまり意味はありません。比べるべきなのは、その顧問料を対価にして、自分の会社が何を受け取れているかです。サービスの中身が見えていれば、続けるにしても変えるにしても、納得のいく判断ができます。
※本記事で紹介したご相談の例は、実際にお受けした複数のご相談をもとに、内容を匿名化・再構成したものです。特定の個人・法人を指すものではありません。
よくある質問
顧問料が高いかどうかは、どうやって判断すればよいですか?
金額だけを他社と比べても判断できません。同じ金額でも、記帳代行が含まれているか、面談が年に何回あるか、給与計算まで見てもらえるかによって、中身がまったく違うからです。まずお手元の契約書で業務範囲と関与の頻度を確認し、「その中身に対して納得できる金額か」という順序で考えると判断しやすくなります。
顧問料の値上げを求められました。応じるべきでしょうか?
すぐに結論を出す必要はありません。まず「何が増えたのか」を具体的に確認してください。取引の件数が増えた、従業員が増えた、新しい業務が加わったなど、理由がはっきりしていれば増額には根拠があります。理由が示されない場合や、説明を聞いても納得できない場合は、業務範囲を見直すことで金額を調整できないか相談する余地があります。
顧問料を下げてほしいと伝えるのは、失礼にあたりませんか?
失礼にはあたりません。ただし「安くしてほしい」とだけ伝えるより、「この業務を自社で引き取れば、顧問料はどのくらい下げられますか」というように、業務範囲とセットで相談するほうがお互いに話を進めやすくなります。金額だけの交渉は、どちらかが不満を抱える結果になりがちです。
まずはお気軽にご相談ください
いまの顧問料に何が含まれているのか、契約内容を確かめながらご状況をうかがって一緒に整理します。いまの顧問のままで問題がなければ、その旨を率直にお伝えします。「こう聞いてみては」という助言だけで終わることもあります。セカンドオピニオンだけでも構いません。
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