顧問税理士は、ふだん何をしてくれる人なのか ― 期中に受け取れているはずの5つのもの
「毎月きちんと顧問料を払っている。でも、この一年で先生が自分からすすんで出してくれたものがあっただろうか」——そう振り返ってみて、決算のときの申告書以外に思い当たるものがない。そんなご相談を受けることがあります。
これは、必ずしも「その税理士が手を抜いている」という話ではありません。多くの場合、顧問料に何が含まれているのかを、お互いに一度も確認しないまま数年が過ぎていることが原因です。まずは、期中に受け取れているはずのものを具体的に見ていきましょう。
1. 「決算のときだけ会う人」になっていないか
税務顧問契約は、本来は一年を通じて税理士に会社の税務と会計を見てもらえるサービスのはずです。ところが実際には、期中に税理士からの連絡がほとんどないまま決算期を迎え、申告期限が迫ってくると慌てて、税理士に一年分の資料をまとめてお預けする、という付き合い方になっている経営者が少なくありません。
この形でも、申告そのものは期限内に終わるでしょう。ゆえに問題が認識されにくい。問題が表に出てくるのは、たいてい別の場面です。銀行に期中の残高試算表を求められたとき、経営者が思っていたより納税額が大きかったとき、そして決算期末前に提出すべきだった届出や申請の提出漏れが判明したときです。
いずれも、期中に数字と予定が共有されていれば、事前に手を打てた可能性があるものです。逆に言えば、期中に何を受け取れているかを確認することが、いまの顧問関係を点検する最初の具体的な方法になります。
2. 期中に受け取れているはずの5つのもの
顧問契約の内容にもよりますが、一般的な顧問契約であれば、次のようなものが期中に出てくるのが自然です。ご自身の会社に当てはめて、思い当たるものがいくつあるか数えてみてください。
期中のチェックリスト
- ① 数字の途中経過(残高試算表)/いま会社がいくら儲かっていて、いくら残っているのか。月次でも四半期ごとでも構いませんが、決算まで一度も見ていないのは遅すぎます。また、受け取ってはいるけれども税理士からのレビューがなく、自身では読み方も分からないという場合は、税理士に読み方を聞いてみてください。税理士側も「分かるだろう」と思って、試算表を渡すだけで解説しないことが時々あります。顧問契約を結んでいるのであれば、分からないことがあるならその都度、税理士に質問していきましょう。
- ② 納税額のおおよその見通し/決算の2〜3か月前までに「このままだと納税はこのくらいになりそうです」という話が出ているか。ここが決算日を過ぎてからでは、打てる手がまずありません。
- ③ 期限のカレンダー/申告と納付の期限、源泉所得税や社会保険料の納付時期、提出しておくべき届出や申請の締切。いつ何をするかが、事前に共有されているか。
- ④ 判断が必要な場面での「選択肢」/税理士から一つのやり方だけを示されるのではなく、他にどんな方法があり、それぞれどのようなリスクと効果をもたらすのかを説明してもらっているか。
- ⑤ いまどこまで進んでいるかの共有/お預けした資料がどこまで処理されているのか。記帳が何か月分たまっているのか。進捗を見せてもらっているか。
5つのうち、いくつ思い当たったでしょうか。これらのうち3つ以上「受け取っていない」場合は、一度話し合う価値があります。ただし、話し合う前に確認しておきたいことがあります。
3. 「届いていない」理由は、3つある
税理士から期中に何も出てこないとき、その理由は大きく3つに分かれます。それらのうちどれが当てはまるかによって、取るべき行動がまったく変わります。
1つめは、契約に含まれていない場合です。顧問契約において、税理士の業務範囲が申告書の作成と日常の税務相談に限られていて、試算表と決算書の作成はクライアント側の業務と定められている場合があります。この場合、税理士は契約どおりに仕事をしているので、いくら待っても試算表は出てきません。
2つめは、クライアント側の業務が追い付いていない場合です。顧問契約の中で、会計データの入力がクライアント側の業務と定められている場合、その入力が終わらなければ税理士は試算表を作れません。税理士側にとっても、入力済みの会計データが年度末まで渡されない状態では、期中に数字を出しようがない、というのが実情です。
3つめは、税理士側で業務が滞っている場合です。資料を送ったのに処理が進んでいない、質問への回答が返ってこない、担当者が交代した後の引き継ぎができていない。この場合は、たしかに税理士側の問題です。
ここで大切なのは、1つめと2つめは、税理士を変えても解決しないということです。業務範囲の問題は契約時に認識を合わせないと新しい税理士との間でも同じように発生しますし、クライアント側の業務が追い付いていない問題は、相手が代わっても変わりません。
4. 責める前にできる、3つの質問
では、どうやって見分けるか。実は、難しく考える必要はありません。次の3つを、そのまま聞いてみてください。不満をぶつける形ではなく、確認する形で聞けるのがこの3つ聞き方の優れた点です。
- 「いまの顧問料には、どこまでの業務が含まれていますか」——契約書に書かれていることの読み合わせです。ここで、クライアント側が期待していた業務が実は契約の範囲外だったと分かることがよくあります。
- 「月次(または四半期)の試算表をいただくことはできますか。追加費用がかかるなら、いくらでしょうか」——できる/できない、いくらかかるかがはっきりします。追加費用を聞くことで、相手も答えやすくなります。
- 「○○をしてもらうために、こちらから何をいつまでにお渡しすればよいですか」——ボールが税理士側かクライアント側のどちらにあるのかを確定させます。この質問をしてみると、税理士側の回答を受け取った瞬間、実は資料の提出がクライアント側で止まっていた、と判明することも少なくありません。
この3つを聞くだけで、多くの場合は原因がどこにあるかがはっきりします。そして原因が分かれば、たいていは顧問を変えずに解決できます。
5. それでも変わらなかったとき
一方で、3つの質問をしても状況が動かないことがあります。「やっておきます」という返事のまま数か月が過ぎる。追加費用を払うと決めたのに、試算表が出てこない。同じことを二度お願いしても変わらない。
そうなったときは、意思の問題ではなく事務所の体制の問題である可能性が高くなります。担当者の方が努力していても、事務所全体の人手不足や仕事の進め方が改善しなければ、結果は変わりません。ここまで来て初めて、顧問の変更を具体的に検討する段階だと考えてよいと思います。
順番を逆にしないことが大切です。問題の原因を確認せずに顧問を変えると、次の税理士でも同じことが起きます。「顧問契約に何が含まれているのか」を確かめたうえで判断すれば、変えるにせよ続けるにせよ、ご自身の納得のいく結論にたどり着けるでしょう。不満をどう伝えるかについては、顧問税理士に不満があるときにまず取るべき行動もあわせてご覧ください。
まとめ
顧問料に見合うものを受け取れているかどうかは、期中に税理士から受け取ったものをひとつひとつ確認すれば分かります。試算表、納税の見通し、期限のカレンダー、選択肢の提示、進捗の共有。この5つのうち、いくつ受け取れているでしょうか。
税理士から受け取れているものが足りないと感じたら、まずは契約範囲を確認するところから始めてください。多くのご相談は、その一度の会話で解決します。それでも変わらないときに、次の選択肢を考えれば十分間に合います。
※本記事で紹介したご相談の例は、実際にお受けした複数のご相談をもとに、内容を匿名化・再構成したものです。特定の個人・法人を指すものではありません。
よくある質問
税務顧問契約には、そもそもどこまでの業務が含まれているのですか?
税務顧問契約にどこまでの業務が含まれているかは、税理士事務所によって異なります。大抵は、申告書の作成と提出、日常の税務相談は契約の範囲に含まれています。一方で、記帳代行や給与計算、資金繰りの相談は別料金になっていることがあります。まずはお手元の契約書で業務範囲をご確認ください。契約書に書かれていない業務を税理士に期待していた、というすれ違いは実際によく起きています。
試算表は、どのくらいの頻度で受け取れるものですか?
税理士事務所に記帳代行まで依頼している場合は、資料をお渡ししてから1〜2か月以内に月次の試算表が出てくる場合が多いです。自社で記帳している場合は、御社の入力が終わらなければ、税理士側も試算表を作れません。まず、どちらの側で業務が止まっているのかを確認すると、話が早く進みます。
「何も出てこない」と感じたら、すぐに顧問を変えたほうがよいですか?
すぐに結論を出す必要はありません。税理士から期中に何を出してもらえるのかを一度確認するだけで、実は契約に含まれていた、あるいは依頼すれば出せた、と分かることが少なくありません。それをお伝えしたうえでも状況が変わらない場合に、初めて顧問の変更を検討する。その順番で十分です。
まずはお気軽にご相談ください
いまの契約で税理士から何を受け取れるはずなのか、契約内容を確かめながらご状況をうかがって一緒に整理しましょう。いまの顧問のままで問題がなければ、その旨を率直にお伝えします。「こう聞いてみては」という助言だけで終わることもあります。セカンドオピニオンだけでも構いません。
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