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経理を税理士に「丸投げ」して大丈夫? ― 数字が見えない会社が、静かに損をしている理由

「経理はぜんぶ税理士に任せているから、自分は数字を見ていない」——忙しい経営者や個人事業主なら、ごく自然なことです。ただ、その"任せ方"によっては、気づかないうちに手取りを減らしていることがあります。この記事は、丸投げをやめさせるためのものではありません。丸投げしたまま、損をしない方法をお話しします。

1. 「丸投げ」には、実は2種類ある

ひと口に「税理士に丸投げ」と言っても、中身は大きく2つに分かれます。

作業を手放している点は同じでも、この2つはまったく別物です。そして、問題が起きやすいのは前者のほうです。

2. 数字が見えないと、なぜ手取りが減るのか

「見えなくても、正しく申告できていれば同じでは?」と思うかもしれません。しかし、数字が見えなければ、じわじわと効いてくる損失が生まれます。

(1)打つべき手が、間に合わなくなる

税金を抑える手立ての多くは、決算日を過ぎると使えなくなります。決算期末を過ぎてから、どのくらい利益が出ているかが初めて分かったとしても、そのときにはもう税金を抑えるために打てる手が残っていない。そんなことがしばしば起こります。数字が見えていれば、決算の数か月前に「今期は利益が大きく出そうだ。今のうちにこうしよう」と動けたはずです。

たとえば、こんなご相談があります。利益率の高い一人社長の会社で、日々の記帳は税理士に任せ、経営者自身は数字をほとんど見ていませんでした。決算が近づいて試算表を渡され、そこで初めて「今期は思ったより利益が出ている」と気づきます。慌てて「何か打てる手はないか」と相談に来られるのですが、決算日まで残りわずか。本来なら使えたはずの選択肢の多くは、もう間に合いません。もし数か月早く数字が見えていれば、経営者が取れた手はもっと多かったはずです。

(2)「提案」が生まれる土台がない

節税や資金繰りの提案は、数字がリアルタイムで共有されていて初めて生まれます。決算期末が過ぎてから一年の会計をまとめて処理する運用では、税理士の側にとっても「今こういう手があります」と提案する時間と材料がありません。税理士事務所から提案が出てこないのは、担当者のやる気の問題というより、月次決算を行わないため数字が見えないという業務体制の問題であることが少なくありません。

(3)手戻りと、判断の遅れ

一年の会計をまとめて処理する運用は、後から入金や修正が発覚して作業をやり直すはめになる、という手戻りを生みがちです。そして何より、資金繰りの判断——「この支払いをして大丈夫か」「借入をしなくても預金残高が足りるか」——を正確に行えなくなり、取引先の信用を失う可能性もあります。

手戻りも、同じ構図から生まれます。ある物販の会社では、仕入や経費の記録を数か月分ためてから、期末に一気に起こしていました。あとになって経営者が「この入金は何だったか」「この支払いは計上済みか」を一件ずつ思い出す作業に、本業の時間が削られていきます。数字をその都度記録できていれば、そもそも生まれなかった手間です。

こんな"逆転"が起きていませんか

次のようなご相談を受けることがあります。「ネットで調べた節税方法について税理士に聞いたら、きっぱり否定されて代案も提示されなかった」。これは、専門家が経営者の立場で会社のことを考えるのではなく、税務署の立場で会社のことを考えているような状態です。その姿勢が不自然だと感じたなら、その感覚は正しいかもしれません。

3. 「作戦会議ができる」とは、どういう状態か

経営者が目指したいのは、経理を自社でやることだけではないはずです。数字をもとに、税理士と経営の作戦会議ができる状態こそがあるべき姿です。

たとえば、クラウド会計を使うと、会社の業績をリアルタイムで確認できます。ここで大事なのは、クラウド会計は「経理を自分で全部やる」ためだけの道具ではないということです。記帳は税理士に任せて、経営者は数字をリアルタイムで追う——クラウド会計はそういう使い方もできます。

数字が見えていれば、月に一度でも税理士と「この利益、この見込みならこう動こう」という会話ができます。丸投げの手軽さを保ったまま、"見える化"だけを足す。これが、損をしない任せ方でしょう。

4. あなたの経理は、いまどちらですか

次のいくつかに当てはまるなら、いまは「見えなくなる丸投げ」に近いかもしれません。

上のいくつかに当てはまっても、慌てる必要はありません。これは能力の問題ではなく、"任せ方"の設計の問題です。設計は、変えられます。

5. 丸投げは、やめなくていい

ここまで読んで、「じゃあ自分で経理を勉強しないといけないのか」と身構えた方もいるかもしれません。しかし、ここでは、そういうことが言いたいわけではありません。

変えるべきは、作業の担い手ではなく、数字の見え方です。経理の作業は引き続き任せても構いません。ただ、経理の結果できあがった数字が、あなたにもリアルタイムで見える。そして、その数字をもとに一緒に考えてくれる相手がいる。この2つがそろえば、丸投げは"損"ではなく"効率化"になります。

もし今、数字が見えないまま何年も過ぎていて、税理士から節税や資金繰りの提案を受けたこともない——という状態なら、それは一度、契約の見直しを考えてよいサインです。ただし、いきなり顧問を乗り換える必要はありません。まずは今の税理士に「月次の数字を見せてほしい」「クラウド会計にしたい」と伝えてみるところからでも十分です。

※本記事で紹介したご相談の例は、実際にお受けした複数のご相談をもとに、内容を匿名化・再構成したものです。特定の個人・法人を指すものではありません。

よくある質問

経理を税理士に丸投げするのは、そもそも良くないことですか?

いいえ、経理の丸投げ自体は必ずしも悪いことではありません。経営者が手を空けて本業に集中できるのは大きな利点です。問題になるのは、丸投げした結果、経営者自身が自社の数字をまったく見られなくなり、打つべき手のタイミングを逃してしまうことです。経理を丸投げしていても、業務の設計次第で、数字が見える状態は作れます。

クラウド会計にすれば、丸投げをやめて自分で経理をやることになるのですか?

いいえ。クラウド会計は「自分で全部やる」ためだけの道具ではありません。記帳を税理士に任せたまま、経営者は数字をリアルタイムで追う、という使い方もできます。手間を増やさずに、見える化だけを得るという選択が可能です。

今の税理士から節税や資金繰りの提案が一度もありません。これは普通ですか?

税理士から提案が生まれるかどうかは、多くの場合、数字がリアルタイムで共有されているかどうかに左右されます。決算期末、または決算期末が過ぎてから一年の会計をまとめて処理する運用では、税理士にとって提案のための時間も材料もそろいません。提案がまったくないと感じるなら、それは相性の問題ではなく、月次決算ができていない業務体制の問題である可能性があります。

まずはお気軽にご相談ください

いまの経理体制や、税理士とのやりとりの状況をうかがい、一緒に整理します。今の顧問のままで、数字の見え方を変えるだけで解決することもあります。その場合は率直にそうお伝えします。乗り換えありきのご案内はしません。セカンドオピニオンだけでも構いません。

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