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「税理士によって言うことが違う」のはなぜか ― 説明が食い違ったときの確かめ方

前の税理士には「その処理では調査で認められない」と強く言われた。別の事務所に相談したら「あなたのやり方ではできません」と断られた。動画で解説していた人は「問題ない」と言っていた。生成AIに聞いたら、また別の答えが返ってきた——同じことを聞いているはずなのに、答えがぴったりそろわない。

どの答えを信じればいいのか、それを判断する材料を自分は持っていない。この状態がいちばん苦しいところだと思います。

結論から言うと、答えが割れる理由は、だいたい5つに絞れます。そして、そのうちのいくつかは、あなたが質問を2つか3つ足すだけで、自分の状況に当てはまる理由を見分けられます。

1. 答えが違う=どちらかが間違っている、とは限らない

税務の結論は、前提となる事実・その時点の制度・どこまでリスクを取るかという方針、この3つが組み合わさって決まります。3つのうち1つでも違えば、同じ論点でも出てくる答えは変わります。

たとえば「この支出は経費になりますか」という質問は、「なる/ならない」の二択に見えます。けれども実際には、「どういう事実があって、それをどう記録に残しておけば、経費として説明がつくか」という判断の問題です。だから、事業の中身を詳しく聞いた人と、質問文だけを読んだ人とでは、返す答えが違って当たり前なのです。

答えが割れたとき、まず疑うべきなのは相手の力量ではありません。そもそも同じ前提で聞かれていたのか、です。

2. 食い違いが起きる5つの理由

(1)前提の置き方が違う

いちばん多いのがこれです。あなたが「個人事業のつもり」で聞いた質問に、相手が「法人の前提」で答えている。副業のつもりで聞いたら、専業の前提で答えが返ってきている。売上の規模や、取引の相手が国内か国外か、そうした前提が異なれば結論が変わる論点はたくさんあります。

(2)話している時点の制度が違う

税制は毎年変わります。数年前に撮られた動画や、古い記事の解説は、その時点では正しかったものが、いまは当てはまらないことがあります。生成AIはさらに注意が必要で、学習した時点の制度のまま、迷いのない書き方で答えを返してくることがあります。読む側からは、それが最新の話なのか数年前の話なのか見分けがつきません。

(3)判断に幅がある論点だった

税務には、白黒がはっきり決まっている部分と、事実の評価しだいで結論が動く部分があります。後者では、同じ事実を見ても「これは記録を整えれば説明がつく」と考える税理士と、「現状ではリスクがあるため踏み込まない」と考える税理士に分かれます。これは正誤ではなく、どこまでリスクを取るかという方針の違いです。

(4)「できない」の意味が違う

「できません」という言葉には、少なくとも4つの意味が混ざっています。制度としてできない。あなたのいまの書類の状態ではできない。期限を過ぎているのでもうできない。そして、その事務所では引き受けていない。最後のものは、他の事務所であれば普通に引き受けてくれることがあります。

(5)情報源があなたの事業を見ていない

動画やSNSの解説、同じ業種の仲間からの助言は、一般論としては正しいこともあるかもしれません。ただし、そこで話している人はあなたの帳簿も契約書も見ていませんし、あなたが税法に違反したときの責任を取ってくれるわけでもありません。「一般論として正しい」ことと「あなたの場合に当てはまる」ことは、別のことです。

3. 「できません」と言われたら、もう一歩だけ聞いてみる

上の(4)を見分けるために、断られたときに聞いていただきたい質問が3つあります。

  1. 「それは制度としてできないのですか、それとも私のいまの状況ではできないのですか」
  2. 「できるようにするには、何が足りませんか」
  3. 「いつまでに何をすれば間に合いますか」

この3つを聞くだけで、すっぱりとあきらめるべき話なのか、書類をそろえれば通る話なのか、期限までに動けば間に合う話なのかが分かれます。どれも専門知識のいらない質問です。

海外向けの販売をされている方から、こんなご相談を受けたことがあります。相談した事務所で「あなたの仕入取引の方法では消費税の還付は取れない」と言われ、それを制度上の結論だと受け取って、何年もあきらめていた、というものでした。事実を並べ直してみると、取れないのは「いまの書類のそろえ方では」という意味で、輸出したことを示す書類をどう受け取っておくか、仕入れしたことを証明するデータをどう保存しておくかなどを変えれば、説明のつく話でした。「制度としてなのか、書類としてなのか」を一度聞いていれば、もっと早く分かったことです。

4. 自分で確かめられることは、思っているより多い

税法そのものを読む必要はありません。専門家でなくても確かめられることが、2つあります。

ひとつは、出典を聞くことです。「その話は、どこに書いてありますか」と聞いてみてください。国税庁の案内や、条文や、通達を示してもらえれば、中身が分からなくても「根拠のある説明だ」と分かります。逆に、出典の話になると説明があいまいになる場合、それは判断に幅がある論点か、経験則で話しているかのどちらかです。どちらも必ずしも根拠がないわけではありませんが、確定した答えではないというつもりで受け止める必要があります。

もうひとつは、時点を聞くことです。「これは何年分の話ですか」と確認するだけで、古い前提の説明をふるいにかけられます。特に、動画や生成AIの説明を持ち込むときは、この一言が効きます。

生成AIは、出典の当たりをつける下調べには使えます。ただし、最終的な判断には使わないでください。制度は毎年改正され、AIは古い前提のまま、はっきりした口調で答えを返してきます。あなたの手元にある契約書や帳簿も見ていませんし、あなたの代わりに責任を取ってくれることもありません。

5. セカンドオピニオンを取っていい場面、取らなくていい場面

外の目を入れる価値があるのは、次のような場面です。

反対に、急いで外に聞かなくてよいのは、日々の勘定科目の付け方や、少額の支出をどちらに寄せるかといった話です。ここは方針の違いの範囲に収まることが多く、どちらを選んでも結果が大きく変わりません。また、説明の仕方や連絡の頻度に対する不満は、答えの正しさの問題ではなく、伝えれば変わることがあります。

そして、いちばんお伝えしたいことがあります。セカンドオピニオンは、いまの顧問を変えるためのものではありません。実際には、いまの顧問の説明が正しかったと確認して終わることが多く、それはそれで意味があります。ずっと抱えていた迷いが消えるからです。

ですから、順番としてはまず、いまの顧問に「なぜそう判断されたのですか」ともう一度聞いてみてください。前提をそろえて聞き直すと、最初とは違う答えが返ってくることも珍しくありません。それで納得できるなら、外に出る必要はありません。

まとめ ― 迷ったら、前提をそろえてもう一度聞く

整理すると、確かめる順序はこうなります。

  1. 答えが割れたら、まず同じ前提で聞かれていたかを疑う
  2. 断られたら、制度が理由なのか、いまの状況が理由なのか(現状を改善すれば可能性があるのか)を聞き分ける
  3. 出典と、何年分の話かを確認する
  4. 後から戻せない判断のときだけ、外の目を入れる

いちばんもったいないのは、答えが食い違ったまま、誰にも聞き直さずに自分ひとりで決めてしまうことです。聞き直すのはただの確認であって、相手を疑うことではありません。

まずは、いまの顧問の方に、同じ質問を前提ごと並べて、もう一度聞いてみてください。

※本記事で紹介したご相談の例は、実際にお受けした複数のご相談をもとに、内容を匿名化・再構成したものです。特定の個人・法人を指すものではありません。

よくある質問

税理士によって言うことが違います。どちらが正しいのでしょうか?

どちらかが間違っている、とは限りません。税務の結論は、事実の前提・その時点の制度・どこまでリスクを取るかという方針の3つで決まります。聞かれた前提が少し違えば、同じ論点でも結論は変わります。まず「その答えは、どういう前提で聞いたときの答えか」を比較してみてください。前提をそろえても答えが割れるなら、そこは判断に幅がある論点だということです。その場合は、どちらを選ぶと後で何が起きるのかを両方の方に聞いてください。

「できません」と言われたら、あきらめるしかないのでしょうか?

あきらめる前に、3つだけ聞いてみてください。1つめは「それは制度としてできないのですか、それとも私のいまの状況ではできないのですか」。2つめは「できるようにするには、何が足りませんか」。3つめは「いつまでに何をすれば間に合いますか」。制度上の壁なのか、書類がそろっていないだけなのか、期限を過ぎているのか、その事務所では引き受けていない業務なのか。この4つは、あきらめるべきかどうかがまるで違います。

セカンドオピニオンを取ると、いまの顧問税理士に失礼になりませんか?

失礼にはあたりません。医療と同じで、後から戻せない判断のときに別の見方を確かめるのは、依頼する側の当然の行動です。実際には、いまの顧問の説明が正しかったと確認して終わることが多く、それはそれで得られるものがあります。気になるようであれば、外に聞く前に、いまの顧問に「なぜそう判断したのか」をもう一度聞いてみてください。それで納得できれば、外に出る必要はありません。

判断に迷っている論点だけでも、ご相談ください

「こう言われたのですが、どういう意味でしょうか」というご相談で構いません。ヒアリングとご提供いただいた資料をもとに、その説明がどの前提に立っているのかを一緒に整理します。いまの顧問の説明で問題がなければ、その旨を率直にお伝えします。セカンドオピニオンだけでも構いません。

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